願望

そんなにその人の事は好きではなかったんです、最初は。
それなのに、気がついたらこんな事になっていました。
ええ、普通の恋人同士の関係だと思いますよ。
彼は結婚もしてないし、私も未婚です。お互いにバツイチで、もう結婚なんて懲り懲りだよね、って言ってます。
デートは、映画が多いですね。それと、冬にはスキーに行く事もあります。一緒に食事するのが好きですね、食の好みが似ているんです。
私たちは、普通のカップルだと思うんですよ。
ただ、違う事があるとすると、彼には他にも付き合っている女性がたくさんいる事と、私達の共通の趣味がSMという事だと思います。

私は、幼い時から被虐願望がありました。
時代劇の拷問シーンが大好きで、一方、何かのために犠牲になるヒロイン像に憧れていました。
変な遊びをしていましたね。近所の男の子数名と女の子数名のグループで、町を歩き回ります。
探検隊ごっこです。
リーダーを1人決めて、そのリーダーの命令には従うという遊びです。
リーダーは順番になります。
命令は他愛ないものがほとんどでしたが、ある1人の男の子がリーダーになると、決まって私は、酷い事をされていました。
下着を脱がされてお尻を叩かれるとか、放尿する所を全員に見せるとか、、、。
私は嫌ではなく、その子に従っていました。難易度の高い事を要求されて、クリアする喜びのようなものがあったみたいです。男の子も、それは、私にしか命令しなかったので、幼いながら、性癖の一致のようなものだったのでしょうか。
長ずるにつれ、被虐願望は、段々とはっきりした形を取り始めました。
思春期は、恋愛小説や官能小説よりバイオレンス小説が好きでしたし、エッチな本や漫画より、週刊誌の事件ものでオナニーしていました。
実験台にされる、というのが激しく興奮するシチュエーションです。
自分の意志を無視されて、とことん実験動物のように扱われるのが、憧れでした。
そこには、どんなに拒否しても無慈悲に辛い事をされる安心感があるからです。
心の底から悲しみと諦めの涙を流したい。それを見ても面白い玩具としか認識しない相手との世界が憧れです。。
愛などが一滴も入らない嗜虐と被虐を想像すると、、それだけで、カッと熱くなり、性器が濡れてきます。
普通のお付き合いも何人かとしました。
振られたり振ったりの出会いや別れも一通り経験したけど、元カレ達には、どうしても被虐願望は伝えられませんでしたね。
だって、そんな変態だと思われるのは嫌でしたから。
自分の身体も心もめちゃくちゃに切り裂かれてボロボロにされたい、どこまでも痛めつけられて死にたい、死体さえも凌辱されて、跡形もなくなりたい、誰の記憶からも消えてなくなりたい、そんな事を考えてるなんて、異常だと、そういう自覚がありましたから。
元カレ達とのSEXは普通のSEXだったと思います。
キスしたり胸を揉まれたり、フェラチオしたり、クンニされたり。
真面目な性格のせいか、フェラは頑張ったんですよ、最初は。
でも、シックスナインの形にされたり、クンニされたり、自分は、何を求められてるのか、考えてしまったりしました。
クンニされたら、気持ち良く喘がないと、って思うのですが、その直前は、相手を気持ち良くさせるフェラに集中してたわけで、、、。そんなに早く気持ちを切り替えられないよなぁ、と思ってました。
まぁ、そうですね、演技といえば演技だけど、そんなものだと思います。SEXって女性の忖度で成り立っている気がします。
思いやり、っていう言葉はSEXの際に使うのが一番似つかわしいと思います。
性的な感度とSEXの際の思いやりは相反するものではないので、一応、オーガズムはありましたが、だからといって、私にとってSEXが好きな行為とはいえませんでした。
あちこち舐められて気持ち悪いし、あんあんするのは、まるでAV女優になったような気分で、良かったのですが、、、正直にいえば、自分の変態じみた妄想でオナニーした方が、性的快楽ほ上でした。

彼には、なぜ私の暗くてはずかしい秘密を話してしまったのか、今となっては、その時の事がよく思い出せないのですが、確か私が密かに自分の願望を書いていたブログを見られてしまったのが始まりだと思います。

失恋

急にむっつりと黙ってしまう裕一に、汐里は疲れてきてしまっていた。
何か不満があるなら、はっきり言えばいいのに、話しかけてもうわの空な感じで受け答えしている。
そして、ずっとスマホにばかり目を落としている。
「あのさ、私、全然裕一といても楽しくないんだよね」
汐里が言うと、少し遅れて裕一がスマホから目を上げた。
「僕は楽しいから一緒にいるんじゃなくて、汐里を愛しているから一緒にいるんだけどな」
「私は、裕一の事をもう愛してるんだか愛してないんだか、分からないわ。裕一って、つまらないんだもの」
「僕は芸人じゃないからな、いつも面白いとか無理だよ」
「もういいわ。私つまらない人と付き合う気は、ないから」
「何怒ってるんだよ、汐里。ちょっと冷静になれよ」
裕一は、慌てた感じだけど、汐里は、もうこれ以上、裕一とは一緒にいる気はなかった。
お互いに、少し距離を置こう、という話にはなったが、汐里の方は、何を話しても煮え切らない裕一に飽き飽きしていた。
ショッピングモールをブラブラして、ラブホで短いセックスした後にピザを食べて、後はスマホをひたすら弄るデートにも飽き飽きしていた。
うちに帰ると汐里は、パソコンで、こっそり見ているサイトのブログを読んだ。
まりかの調教日記という題名のブログだ。
そこに感想を書き込むと、ブログ主のまりかが返信をしてくれる。

今日の調教はすごいですね。ベッドに縛られて3人の男の人に犯されるなんて!
まりかさんは、ヨシヤさんの事を本当に愛しているんですね。

汐里さん、いつも感想ありがとう。
私にとってヨシヤさんは神様みたいなものです。
神様に命令されるんですから、なんでも言うことをきいて当たり前なのです。

汐里は、次に自分のブログを更新した。
これは物語のブログで、自分の破滅願望を主人公のお姫様に投影したものだ。
想像で書いたものだか、結構、読者がついている。

裕一とつまらないデートをするより、こうしている方がずっと楽しい。

自分のブログを更新してから、オナニーして寝る。
オナニーのオカズはまりかの調教日記だったり自分が書いてるブログのワンシーンだったりする。
今日は身動きできないように縛られて代わる代わる男達に犯されるのを想像してみた。
「い、いや、、、助けて」
そっと呟いたら、その瞬間にイッてしまった。
汐里のオナニーは、ちょっと前から手を使わないオナニーになっている。
ノーハンドオナニーだ。
自分で下腹に力を入れて中をグッグッと動かすと、段々と熱くなってきて、ほわっとしてくる。
クリトリスだけに刺激を加えるより長く楽しめるのだ。
クリトリス刺激だと一瞬、鋭い痛みのようなィき方をして、終わってしまう。
グチュグチュと長く尾を引くようなノーハンドオナニーをする時は、漏らしてもいいように、布団にペットシートを敷いてから行うのだ。

あぁ、今夜もシオを吹いてしまった。

その時、裕一からLINEが来た。

よく考えたんだけど、僕達は別れた方がいいかと思う、、、

かなり長いLINEだったけど、要するに別れのLINEだった。
汐里は、そのLINEを読んだ後にパソコンをチェックした。
まりかの調教日記が更新してあったからだ。
すると、いつもの調教日記ではなく、まりかが調教されるのを見たり、一緒に調教される男女数名を募集すると書いてあった。
汐里は、ドキドキして、胸が苦しくなってしまった。
さっき失恋したばかりなのに、いや、もうずっと前から恋心は失われていたのだ。
このドキドキは、何か未知の扉を目の前にした高まりなのだ。
汐里は、参加させていただきたいです、と書き込んで、そっと返信した。

カップルさん

汐里は裕一と一緒にヨシヤのまりか調教に参加していた。
裕一の別れのLINEをもらってから、汐里は、裕一に最後に望みを聞いてもらってもいい?とLINEを返したのだ。
もう別れるなら、密かな恥ずかしい性癖なんて、バレてもいいと思った。
裕一は、驚いたみたいだが、彼も男性だ。好奇心はあるようで、一緒に某ホテルへと行くことを了承した。
「びっくりしたな。汐里にこんな趣味があるなんて。興味があるならもっと早く言ってくれたら良かったのに。ヴァィブとか大人のオモチャって、実は使ってみたかったんだ」
裕一は汐里の肩を抱いた。

大人のオモチャ?そんなの全然興味ないわよ。。。

汐里は裕一との感覚の相違が、じれったかったが、そもそも、1人で参加する勇気がどうしても出なくて
裕一を誘ったのだ。
今日は付き添いくらいの役目で丁度いい。
ドキドキと胸を震わせて、部屋に入ると、全裸の女性が床に跪いて土下座していて、その周りを6、7人の男が取り囲んでいた。
まりからしい。黒い首輪をしている。
「まりか、顔をあげて」
男達の中で、比較的大柄なスキンヘッドの男性が声をかけた。
あの人が、まりかのご主人様のヨシヤかな。
汐里がそっと視線を向けると、その男性は、
「アナタが汐里さんですね。ヨシヤです。合同調教に参加ですね」
とにこやかに言った。
緊張してしまい、首をこくんと縦に振るのが精一杯。
「カップルさんですね。いいんですか?」
今度は裕一に聞いた。
「いいですよ。お願いします」
裕一が答えると、ヨシヤは土下座してるまりかを紹介した。
「これが私の飼ってる奴隷のまりかです」
初めて見るまりかは、おとなしそうで、ほっそりとしていた。あまり、身体に凹凸がなく、少女のような体型だった。
「ご挨拶して」
とヨシヤが言うと、まりかが、自分の手で自分の女性器を広げた。
「奴隷のまりかです。調教よろしくお願いいたします」
小陰唇が飛び出て、クリトリスがぷくりと大きい。胸が小さい子供っぽい体型で、そこだけがグロテスクにぐにぐにと息づいているようだ。

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